その中に、オサムちゃんの車がありました。
マサ○と義弟に、気を付けて安全運転で帰るように伝え、ミナは車を降りました。
入り口に差し掛かった時に丁度、オサムちゃんが出てきました。
(…なしたの?…)
「…仕事場にも連絡しなきゃいけないし、家の片付けも頼まなきゃならないから電話する…」
(ノリちゃんは?)
「…二階の喫煙所で座ってる…」
(ミナ行ってるよ?一人で大丈夫かい?)
「…大丈夫だ…」
こんな、至って普通の会話をしました。
ミナはそれ以前に、自分がしっかりしなきゃいけないと思っていたので、普通に振舞いました。
警察署の中に入ると、数人のおまわりさんが仕事をされていました。
親族が訪れたと皆が思っているのは、その視線で痛いほど感じました。
階段を上り少し歩くと、ノリちゃんは喫煙所の椅子に座っていました。
(…ここにいたんだ…)
「あれ!?来たんだ…」
(当たり前でしょ…トッコおばちゃん、連絡くれたんだよ…)
ノリちゃんは、頭の中が真っ白になっていたようで、
自分が理解する為に一つ一つ考え、ミナに問いかけてきました。
カナから何か聞いていないか。
トラブルに巻き込まれていなかったか。
病気はしてなかったか。etc…
ミナは、あれだけ色々な話をしていたのに、
残念ながら、ノリちゃんに聞かれた事に対しての答えは持ち合わせていませんでした。
ノリちゃんの問いは、取調べで得た情報のようでした。
「…あれだけちゃんとしていたのに、何で…」・・・それは誰しもが思うことでした。
電話を終え戻ってきたオサムチャンも椅子に座り、三人それぞれが色々な事を考えていました。
無言のまま、どれくらい時間が経ったのか・・・取調室に案内されました。
机の上には、カナのバッグ、携帯、一冊のノート。
目の前の担当の方が話し始めました。
検死が終わったと言うこと。
カナが発見された時の状況と死因。
携帯電話の最終発信者に連絡を取ったということ。
ノートに書かれていた内容。
…検死結果、窒息死。部屋は荒らされている様子も無く、
テーブルの上に、飲みかけのビールと走り書きが残されたノートがあったということでした。
ノートには、オサムちゃんノリちゃん宛にメッセージが書かれ、
その下にミナ宛のメッセージがありました。
・・・遺書、と一般的に言われるもののようでした。
・・・カナは、自殺と断定されました・・・
そんなはずはない。
きっとミナがそう思ったように、オサムちゃんノリちゃんも思ったはずです。
(カナ、こんな汚い字書かないよ!?)
「…酔っ払って書いたんだ…これはカナの字だ…」
そのオサムちゃんの言葉を聞いて、ミナは込み上げてくる涙をこらえました。
…泣かない!泣くもんか!!!…
悔しくて認めたくなくて、ただただそう思いました。
一通り話を聞き、カナが居る安置所に案内されました。
そこは、一度警察署から出て、外からしか行けない場所でした。
(…なんでそんな離れた寂しい場所に…)
そう思いつつ、口からは、寒いね〜…なんて。
この時は頭と心が完全に分裂していました。
安置所の戸が開けられ、そこには、カナが毛布を被り横になっていました。
「カナー!!!!なんでこんなんになっちゃって・・・・・」
ノリちゃんが泣き叫びカナに近寄った時、ミナは涙を流さずにはいられませんでした。
カナは、ミナがプレゼントしたパジャマを着て、眠っているようでした。
頭を撫で、頬を触り、手を握り。
本当に眠っているようなのに、体は硬く冷たかった。。。
今にもミナ?って目を開けそうなのに、決して開けませんでした。。。
この時のミナは、自分の思ったことを口に出来ませんでした。
感情を露わにすれば、ミナが壊れてしまうと感じたからです。
本当は、何で?どうして?カナ起きて!と泣き叫びたい気持ちでした。
でもそうしてしまったら、気が狂ってしまうと自分で解りました。
オサムちゃんノリちゃんの前で、ミナが狂ったら・・・それはあってはならない話ですから。
頭で冷静に考える事が出来ただけ、救われました。
葬儀社の方が到着して、カナを車に乗せ実家へと向かいました。
実家には、おじさんおばさん方が先に来て、カナの帰りを待ってくれていました。
仏壇の前に寝かせられたカナ…顔には白い布。
ミナはその光景がたまらなく嫌で、白い布を外し、ずっとカナの傍に座っていました。
苦しかったよね、辛かったよね、限界だったんだよね・・・
心の中で何度も何度もカナに言いました。
【続く】
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