自分の心の真ん中にあるものは表に出さず、家族それぞれの見えない糸を結ぼう。
この時の想いは一か八かの賭けでした。
自分自身で限界を感じていたのなら、ミナの性格上、即捨てていたと思います。
何故進むことを決めたのか…きっと、反逆児だからでしょう。。。
ヒカルが幼稚園に行くようになって、世間に目を向けました。
家業の時期以外に、体の空いている春先と秋に使ってもらえる職場を探し、通い始めました。
まるきりやったことのない仕事内容。
知り合いなど居るはずもなく同年代の人も居ない、まして他の人は永年勤めている人達ばかり。
ここでも、ほとんど会話の無い環境を強いられました。
お姑さんタイプの人達が多く、話し方が素っ気なかったり怒っているような口調だったり。
土地柄のせいだと解っていながらも、なかなか馴染めませんでした。
これって女性がやる事?と思うほどのハードな仕事。
ミナは年齢も一番若かったので、暗黙の了解でキツイ所に回ります。
心も壊れかけ修復しきれていないうちに、体をも痛めつけるような日々でした。
新しい仕事を始めてからも、家庭の雰囲気が変わることはありませんでした。
もちろんです…ミナの心が不安定なままですから…
頑張らなければいけないと自分を奮い立たせてみても、
それは、仕事に対しての気持ちに当てられてしまい、
家庭内に向けることが出来なくなっていきました。
そしていっぱいいっぱいになった挙句、何も考えられなくなりました。
考えてみても先のことは何も見えては来ず、かと言って希望を持つ訳でもなく。
家庭内の状況も、良くなりもせず悪くなりもせず。
流されながら、ただ何となく過ごしていました。
この頃です…一人になれたらどんなに楽だろう、と思ったのは…
流されながら一年以上も過ごしました。
ただ何となくの意味の無い毎日。
パソコンに向かいゲームに夢中になる、そんなミナになっていました。
たまに出掛け、買い物帰りにカナの部屋に寄り、お互いの近況報告。
ミナは相変わらずマサ○の愚痴。
カナはこの頃色々とあり、夜の世界に足を踏み入れていました。
しかもチーママとして働いていたので、考える事も沢山あったようで…
愚痴るよりは相談的なことのほうが多かったです。
いつも、考えても答えは出ないよね…という感じの会話で終わりましたが、
素のミナでありのままを話し、割とすっきりした気分で帰って来ていました。
ある日、いつもの様に買い物に出掛けたミナでした。
普段なら、買い物を終えてからカナの所に向かうのですが、
たまに付き合ってもらおうかと思い、朝一番で連絡をとりました。
まだ寝ているであろう午前11時。
呼び出しのベルが1回鳴っただけでカナはすぐに出ました。
((・ω・)あれ?早いね〜起きてたの?)
「…うん。」
(たまにさ買い物でも付き合ってよ?)
「…ちゅうか寝てないと思うし。」
((・ω・)は?思うしって何さ?)
「…何があったか解んない。」
(解んないって、どういうこと?)
「…部屋の中…酷いことになってる…」
(・・・・・・・・)
「爪も割れて痛いし、何かアザも出来てる。」
(ちょ、今行くわ。鍵開けといてよ?)
「・・・・・・・・」
ミナはすぐさまカナの所へ向かいました。
部屋の中は、テレビが転がり鉢植えの土はばら撒かれ、まるで乱闘があったかのような状態。
カナの様子は、いつもと違うとすぐに分かりました。
(…今朝、どうやって帰ってきた?)
「…タクシー。」
(誰かに送ってもらって此処に入れたんじゃないの?)
「いや、誰も来てない…一人。」
(酔ってて覚えてないだけなんじゃないの?)
「・・・いや・・・誰も来てない。」
(じゃ、なしてこんなんなってる?)
「…カナ…自分でやったと思う」
「…9時くらいになって、気が付いたらこうなってた…」
一点を見つめ、そう話すカナに恐怖感を覚えました。
ただ事では無いと感じ、まずはこの場から連れ出そうと支度するよう言いました。
「…顔も洗ってないんだけど…」
(そんなのどうでもイイから早く支度しな!!!!)
荒みきった姿のまま、上着を羽織らせ車に乗せました。
普段から「部屋に誰か居る感じがする」と言っていたカナだっただけに、
ミナはその「見えない何か」の存在を目の当たりにしているような気がしていました。
(…何処に連れて行けばいいんだ…寺か…神社か…)
ミナは慌てながらも、10年ほど前に厄払いを受けた場所を思い出しました。
そこはカナも厄を払ってもらった場所で、そこに向かいました。
その場所に着き、ミナは車を降りました。
「…降りるの?…降りなきゃ駄目?」
(当たり前だべさ。早くしな!!)
急ぐミナとは反対に、乗り気でない様子のカナ。
半ば無理矢理に車から降ろし、玄関へと向かいました。
そうすると今度は、玄関に入りたくないと言い泣き出しました。
この時のミナは、いつもと全然違う、見たことの無いカナの姿に、
「見えない何か」が重なっていると思わざるを得ませんでした。
(そんな事言ったってどうするの?このまま帰るわけいかないからね!!)
怯えるカナの手を引き部屋の中へと入り、二十分ほど経った頃でしょうか。
カナは重い口を開き始め、見る見るうちにいつものカナへと戻りました。
今思っても、不思議な体験でした。
一番不思議に思っていたのはカナでしょうけど。
一難去ってまた一難…とでも言うべきでしょうか。
何も考えないでただ過ごしていたミナに、味わったことのない刺激が与えられました。
霊感体質…それは、同じ姉妹でもミナにはないもので、もちろん解るはずもありません。
普通に戻ったカナにその時の事を聞かされても、言葉では理解できても
頭がついていきませんでした。
でもそれがカナの感じる現実ならばと、今後気を付けるように言いました。
カナの性格を解っているだけに、これでもう大丈夫、とミナはひとまず安心しました。
【続く】
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